所得税節税
2026年2月6日4分で読める1

不動産賃貸の赤字と損益通算:給与所得との通算で所得税を大幅削減する戦略

高橋 美咲

税理士・ファイナンシャルプランナー

不動産賃貸の赤字と損益通算:給与所得との通算で所得税を大幅削減する戦略

はじめに

不動産賃貸業では、減価償却費・借入金利息・修繕費等の経費が家賃収入を上回る「赤字」が発生することがあります。この赤字を給与所得等と損益通算することで、所得税・住民税を大幅に削減できます。本記事では、不動産賃貸の損益通算の仕組みと節税効果を最大化する方法を解説します。

損益通算の基本的な仕組み

不動産所得の赤字は、給与所得・事業所得・一時所得等と損益通算できます(ただし、土地取得に係る借入金利息は損益通算不可)。

損益通算の計算例:

  • 給与所得:800万円
  • 不動産所得:-200万円(赤字)
  • 損益通算後の総所得:600万円
  • 節税効果(税率33%):200万円 × 33% = 66万円/年

不動産所得の赤字を生み出す主な要因

| 経費の種類 | 内容 | 節税効果 |

|---|---|---|

| 減価償却費 | 建物・設備の取得費を耐用年数で分割計上 | 現金支出なしで経費計上 |

| 借入金利息 | 不動産取得ローンの利息部分 | 元本返済は経費にならない |

| 修繕費 | 建物・設備の修繕・維持費 | 資本的支出との区分が重要 |

| 管理費 | 管理会社への委託費・管理組合費 | 全額経費 |

| 固定資産税 | 土地・建物の固定資産税 | 全額経費 |

| 損害保険料 | 火災保険・地震保険 | 全額経費(長期前払いは按分) |

減価償却費を活用した節税戦略

ステップ1: 建物の耐用年数と減価償却費を計算する

木造住宅(耐用年数22年)・鉄骨造(34年)・RC造(47年)によって減価償却費が異なります。

中古物件の場合、残存耐用年数が短くなるため、減価償却費が大きくなります。

中古物件の耐用年数の計算:

法定耐用年数を超えた物件:法定耐用年数 × 20%(最低2年)

法定耐用年数内の物件:(法定耐用年数 - 経過年数)+ 経過年数 × 20%

例:築25年の木造住宅(法定耐用年数22年)

耐用年数 = 22年 × 20% = 4.4年 → 4年(端数切捨て)

取得費5,000万円(建物部分3,000万円)の場合

年間減価償却費 = 3,000万円 × 0.25(定額法・耐用年数4年)= 750万円/年

ステップ2: 損益通算後の節税効果を計算する

給与所得800万円の場合、750万円の減価償却費で損益通算後の課税所得は50万円になります。

節税額 = (800万円 - 50万円)× 実効税率 - 50万円 × 実効税率

土地取得に係る借入金利息の取扱い

土地取得に係る借入金利息は、損益通算の対象外です。建物取得に係る借入金利息のみが損益通算できます。

借入金利息の按分計算:

建物取得費 ÷ (土地取得費 + 建物取得費)= 建物按分割合

借入金利息 × 建物按分割合 = 損益通算可能な利息

よくある質問(FAQ)

Q1. 不動産所得の赤字はいつまで繰り越せますか?

A1. 青色申告者の場合、不動産所得の赤字は翌年以降3年間繰り越すことができます(青色申告の純損失の繰越控除)。白色申告者は繰越控除ができません。

Q2. 区分マンション1室でも損益通算できますか?

A2. 区分マンション1室でも不動産所得として損益通算できます。ただし、事業的規模(5棟10室基準)に満たない場合、青色申告特別控除は10万円(65万円ではなく)になります。

Q3. 不動産所得の赤字を損益通算した場合、翌年以降の住民税に影響しますか?

A3. 損益通算により課税所得が減少するため、翌年の住民税も減少します。ただし、住民税の計算に使用する所得は所得税と同じではない場合があります。

Q4. 海外不動産の赤字も損益通算できますか?

A4. 2021年以降、海外不動産の減価償却費を国内所得と損益通算することは原則として認められなくなりました(国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例)。

Q5. 不動産所得の赤字と株式譲渡損失を同時に損益通算できますか?

A5. 不動産所得の赤字は給与所得等と損益通算できますが、株式譲渡損失は申告分離課税の配当所得・譲渡所得との通算のみ可能です。不動産所得の赤字と株式譲渡損失を直接通算することはできません。

まとめ:減価償却費の活用で給与所得を大幅に圧縮

不動産賃貸の損益通算は、特に減価償却費が大きい中古物件・新築物件の取得初期に大きな節税効果をもたらします。給与所得が高い会社員・経営者にとって、不動産投資と損益通算の組み合わせは有効な節税戦略です。ただし、土地取得に係る借入金利息の損益通算制限・海外不動産の特例など、複雑なルールがあるため、税理士に相談して適切な申告を行うことをお勧めします。

Q&A よくある質問

Q

不動産所得の赤字はいつまで繰り越せますか?

A

青色申告者の場合、不動産所得の赤字は翌年以降3年間繰り越すことができます(青色申告の純損失の繰越控除)。白色申告者は繰越控除ができません。

Q

区分マンション1室でも損益通算できますか?

A

区分マンション1室でも不動産所得として損益通算できます。ただし、事業的規模(5棟10室基準)に満たない場合、青色申告特別控除は10万円(65万円ではなく)になります。

Q

不動産所得の赤字を損益通算した場合、翌年以降の住民税に影響しますか?

A

損益通算により課税所得が減少するため、翌年の住民税も減少します。ただし、住民税の計算に使用する所得は所得税と同じではない場合があります。

Q

海外不動産の赤字も損益通算できますか?

A

2021年以降、海外不動産の減価償却費を国内所得と損益通算することは原則として認められなくなりました(国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例)。

Q

不動産所得の赤字と株式譲渡損失を同時に損益通算できますか?

A

不動産所得の赤字は給与所得等と損益通算できますが、株式譲渡損失は申告分離課税の配当所得・譲渡所得との通算のみ可能です。不動産所得の赤字と株式譲渡損失を直接通算することはできません。

#損益通算#不動産所得#減価償却#給与所得#所得税節税
シェア

関連記事