法人税節税
2026年3月25日3分で読める1

法人の在庫・棚卸資産の評価方法と節税戦略

佐藤 健一

税理士・中小企業診断士

法人の在庫・棚卸資産の評価方法と節税戦略

棚卸資産の評価方法と節税:見落とされがちな法人税最適化の手段

製造業・卸売業・小売業など、在庫を持つ法人にとって、棚卸資産の評価方法の選択は法人税に大きな影響を与えます。適切な評価方法を選択することで、合法的に税負担を軽減することができます。本記事では、棚卸資産の評価方法と節税戦略を詳しく解説します。

棚卸資産の評価方法の種類

原価法

原価法は、棚卸資産の取得原価をもとに期末在庫を評価する方法です。以下の6種類があります。

| 評価方法 | 概要 | 特徴 |

|---------|------|------|

| 個別法 | 個々の資産ごとに取得原価を把握 | 宝石・美術品など高価品に適用 |

| 先入先出法(FIFO) | 先に取得したものから先に払い出すと仮定 | 物価上昇時は期末在庫が高く評価される |

| 総平均法 | 期首在庫と当期仕入の総平均単価で評価 | 計算が比較的シンプル |

| 移動平均法 | 仕入のたびに平均単価を計算 | リアルタイムの在庫管理に適合 |

| 最終仕入原価法 | 期末直前の仕入単価で評価 | 計算が最も簡単 |

| 売価還元法 | 売価から原価率を逆算 | 小売業に適用されることが多い |

低価法

低価法は、原価法による評価額と時価のいずれか低い方で評価する方法です。時価が原価を下回る場合(評価損が発生する場合)に、評価損を損金算入できます。

評価方法の選択と節税効果

物価上昇局面での節税

物価が上昇している局面では、評価方法によって期末在庫の評価額が異なります。

先入先出法(FIFO): 古い(安い)在庫から払い出すと仮定するため、期末在庫は最近の(高い)仕入価格で評価されます。期末在庫が高く評価されるため、売上原価が低くなり、利益が大きくなります。

総平均法・移動平均法: 期末在庫は平均単価で評価されるため、FIFOとLIFO(後入先出法)の中間的な効果があります。

最終仕入原価法: 期末直前の仕入単価(最も高い価格)で評価するため、期末在庫が最も高く評価されます。

物価下落局面での節税(低価法の活用)

物価が下落している局面では、低価法を採用することで評価損を損金算入し、節税効果を得ることができます。

低価法の適用例:

  • 原材料の市場価格が下落した場合
  • 製品の販売価格が下落した場合
  • 陳腐化・流行遅れにより商品価値が低下した場合

評価方法の変更手続き

棚卸資産の評価方法を変更する場合、変更しようとする事業年度開始の日の前日までに、「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」を税務署に提出し、承認を受ける必要があります。

変更が認められる要件:

  • 変更に合理的な理由があること
  • 変更後の評価方法を継続して適用すること

期末在庫の適正評価と節税

不良在庫・陳腐化在庫の評価損

期末において、以下のような在庫は評価損を計上できます。

  • 陳腐化した在庫: 流行遅れや技術革新により販売価値が著しく低下した在庫
  • 損傷した在庫: 破損・汚損により品質が著しく低下した在庫
  • 過剰在庫: 通常の販売期間内に販売できないと見込まれる過剰な在庫

評価損の計上要件:

評価損の計上には、客観的な証拠が必要です。具体的には、販売価格の下落を示す資料、在庫の状態を示す写真、専門家による鑑定書などが有効です。

廃棄損の計上

販売できなくなった在庫を廃棄した場合、廃棄損を損金算入できます。廃棄の事実を証明するために、廃棄証明書や廃棄業者からの領収書を保存しておくことが重要です。

棚卸資産の税務調査対策

棚卸資産は、税務調査で重点的に確認される項目の一つです。以下の点に注意して、適切な記録を保存しておくことが重要です。

  • 棚卸表(品目・数量・単価・金額を記載)
  • 棚卸の実施記録(実施日、担当者、確認方法)
  • 評価方法の根拠書類
  • 評価損・廃棄損の根拠書類

まとめ

棚卸資産の評価方法の選択と適正な評価は、法人税の節税に大きく影響します。自社の業種・事業環境に合った評価方法を選択し、期末在庫を適正に評価することで、合法的な節税を実現できます。評価方法の変更や評価損の計上については、税理士と相談の上、適切に対応することをお勧めします。

#法人節税#棚卸資産#在庫評価#先入先出法#低価法#評価損
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