決算対策は「3ヶ月前」から始める
法人の決算対策は、決算月の直前に慌てて行うものではありません。効果的な節税を実現するためには、決算月の3ヶ月前(遅くとも1ヶ月前)から計画的に取り組む必要があります。
なぜなら、多くの節税手法には「事前の手続き」や「実際の支出・契約」が必要であり、決算日を過ぎてから遡って適用することはできないからです。
決算前3ヶ月以内に実行できる節税手法
1. 役員賞与の事前確定届出給与
役員に賞与を支給する場合、事前に税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出することで損金算入が認められます。届出の期限は「職務執行開始日から1ヶ月以内」または「株主総会等の決議日から1ヶ月以内」のいずれか早い日です。
届出通りの金額・時期に支給することが条件であり、届出と異なる金額を支給した場合は全額損金不算入となります。
2. 経営セーフティ共済(倒産防止共済)の加入・増額
経営セーフティ共済は、掛金(月額5,000円〜20万円)の全額を損金算入できる制度です。決算前に加入または掛金を増額することで、当期の法人税を直接削減できます。
ただし、前納(最大12ヶ月分)した場合も損金算入が認められるため、決算前に前納することで節税効果を最大化できます。
3. 小規模企業共済への加入
経営者個人が加入する小規模企業共済は、掛金(月額1,000円〜7万円)の全額が所得控除となります。法人の節税ではなく個人の所得税節税ですが、役員報酬と組み合わせた総合的な節税戦略として有効です。
決算月に実行できる節税手法
4. 未払費用・未払給与の計上
決算日までに発生した費用は、実際の支払いが翌期であっても当期の損金として計上できます。
計上できる主な未払費用:
- 未払給与・賞与(決算日までに支給額が確定し、1ヶ月以内に支払われるもの)
- 未払社会保険料(翌月納付分)
- 未払地代・家賃
- 未払利息
5. 在庫(棚卸資産)の評価方法の検討
棚卸資産の評価方法(原価法・低価法)によって、期末在庫の評価額が変わり、売上原価(損金)が変動します。低価法を採用することで、時価が原価を下回っている在庫について評価損を計上できます。
6. 修繕費と資本的支出の判断
建物・設備の修理・改修費用は、「修繕費」(損金)か「資本的支出」(資産計上・減価償却)かによって税務処理が異なります。
修繕費として処理できる基準:
- 支出金額が20万円未満
- 支出金額が前期末取得価額の10%以下
- 3年以内の周期で行われる修繕
修繕費として処理できれば当期の損金となり、即時に節税効果が得られます。
7. 少額減価償却資産の即時償却
中小企業者等は、取得価額が30万円未満の減価償却資産について、取得した事業年度に全額損金算入できます(年間合計300万円まで)。
決算前に必要な設備・備品を購入し、この特例を活用することで節税効果が得られます。
決算後でも対応できる節税手法
8. 法人税の中間申告・予定申告の見直し
前期の法人税額が一定額を超える場合、中間申告(予定申告)が必要です。業績が前期より大幅に悪化している場合、仮決算による中間申告を行うことで、中間納付額を実態に合わせて減額できます。
9. 欠損金の繰越控除の活用
過去に生じた欠損金(赤字)は、最長10年間繰り越して将来の黒字と相殺できます。欠損金の繰越控除は自動的に適用されますが、青色申告の継続が条件です。
節税対策の注意事項
決算対策において最も重要なのは、実態のない節税は行わないことです。実際に支出していない費用を計上したり、架空の取引を作ったりすることは、税務調査で否認されるだけでなく、重加算税(35〜40%)の対象となります。
また、節税の効果を正確に把握するためには、月次試算表を毎月作成し、期末の着地見込みを早期に把握することが重要です。税理士と月次でコミュニケーションを取り、計画的な決算対策を実施することをお勧めします。
