海外資産・国際税務
2026年2月28日3分で読める3

外国籍配偶者との相続・贈与:国際相続の税務と日本の相続税が課税される範囲

田中雅彦

税理士・公認会計士

外国籍配偶者との相続・贈与:国際相続の税務と日本の相続税が課税される範囲

国際相続とは

「国際相続」とは、被相続人(亡くなった方)または相続人が外国籍・外国居住者である場合の相続のことです。日本では、相続人または被相続人が日本に住所を有する場合、原則として全世界の財産に対して日本の相続税が課税されます。

日本の相続税の課税範囲

課税区分の判定

相続税の課税範囲は、被相続人と相続人の「住所(居住地)」と「国籍」によって決まります。

| 被相続人の状況 | 相続人の状況 | 課税範囲 |

|-------------|-----------|---------|

| 日本居住 | 日本居住(日本人・外国人問わず) | 全世界財産 |

| 日本居住 | 外国居住(10年以内に日本居住歴あり) | 全世界財産 |

| 日本居住 | 外国居住(10年超の外国居住・外国籍) | 国内財産のみ |

| 外国居住(日本国籍・10年以内に日本居住) | 日本居住 | 全世界財産 |

| 外国居住(外国籍・10年超の外国居住) | 日本居住 | 国内財産のみ |

2017年改正:課税強化

2017年の税制改正で、相続税の課税範囲が拡大されました。改正前は、外国籍の相続人・被相続人が日本に住所を有しない場合、国内財産のみが課税対象でしたが、改正後は「10年以内に日本に住所を有していた場合」は全世界財産が課税対象となりました。

外国籍配偶者への贈与税

配偶者控除の適用

贈与税の配偶者控除(最大2,000万円)は、婚姻期間が20年以上の配偶者への居住用不動産・居住用不動産取得資金の贈与に適用されます。

外国籍配偶者への適用: 外国籍の配偶者であっても、日本の法律上の婚姻関係があれば、贈与税の配偶者控除が適用されます。

外国居住の配偶者への贈与

外国に居住する配偶者への贈与については、贈与税の課税範囲が問題となります。

  • 受贈者(配偶者)が日本居住:全世界財産が課税対象
  • 受贈者が外国居住(10年以内に日本居住歴あり):全世界財産が課税対象
  • 受贈者が外国居住(10年超・外国籍):国内財産のみが課税対象

国際相続における遺言書の作成

国際相続では、複数の国の法律が適用される可能性があるため、遺言書の作成が特に重要です。

準拠法の問題

相続に適用される法律(準拠法)は、国によって異なります。日本の法律では、相続の準拠法は「被相続人の本国法」とされています(法の適用に関する通則法36条)。

例:日本人が米国在住の場合

  • 日本の法律:被相続人の本国法(日本法)が適用
  • 米国の法律:財産所在地法が適用される場合あり

このような「法律の抵触」を避けるために、各国の法律に対応した遺言書を作成することが重要です。

国際相続における遺言書のポイント

1. 日本の公正証書遺言の作成:日本国内の財産については、日本の公正証書遺言を作成

2. 現地の遺言書の作成:外国に財産がある場合は、その国の法律に基づく遺言書も作成

3. 準拠法の明記:遺言書に適用する法律(準拠法)を明記

4. 相続人の特定:外国籍の相続人については、パスポート番号等で特定

外国税額控除と租税条約

日本と相手国の両方で相続税が課税される「二重課税」が生じる場合、外国税額控除または租税条約によって調整されます。

日本が相続税に関する租税条約を締結している国(2024年現在):

米国・英国・フランス・ドイツ・スウェーデン・デンマーク・南アフリカ・オーストラリア・スイス等

租税条約がない国との間では、外国税額控除により二重課税を軽減できます。

まとめ

外国籍の配偶者・相続人がいる国際相続は、日本の相続税と現地の相続税・遺産税の両方が問題となる複雑なケースです。2017年の税制改正で課税範囲が拡大されたため、「外国に移住すれば日本の相続税は関係ない」という考えは危険です。国際相続の専門知識を持つ税理士・弁護士に早期に相談することをお勧めします。

#国際相続#外国籍#相続税#贈与税#租税条約
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