相続税対策
2026年3月4日4分で読める7

【現金がない場合の】相続税の物納・延納制度:現金がない場合の納税方法と活用戦略——納税方法と活用戦略を徹底解説

専門家監修記事
佐藤 健一

佐藤 健一

税理士登録番号 第34567号

税理士・不動産鑑定士

専門分野:不動産節税・相続

経験15年
相談実績290件以上
佐藤健一税理士・不動産鑑定士事務所

不動産鑑定士と税理士の二刀流で、不動産を活用した節税スキームの設計に特化。タワーマンション節税や小規模宅地特例の活用で累計節税額は100億円超。関西圏を中心に不動産オーナーから絶大な信頼を得ている。

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【現金がない場合の】相続税の物納・延納制度:現金がない場合の納税方法と活用戦略——納税方法と活用戦略を徹底解説

相続税の納税期限と「現金不足」問題

相続税の申告・納税期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。相続税は原則として現金一括納付ですが、相続財産が不動産や非上場株式に偏っている場合、現金が不足して納税できないケースが多くあります。

このような「現金不足」問題に対応するため、税法では「延納」と「物納」という2つの特例が設けられています。

延納制度:分割払いで相続税を納付する

延納とは、相続税を一定期間にわたって分割して納付する制度です。

延納の要件:

1. 相続税額が10万円を超えること

2. 金銭で一時に納付することが困難な事由があること

3. 延納税額に相当する担保を提供すること(延納税額が100万円以下かつ延納期間が3年以下の場合は不要)

延納期間と利子税率:

| 相続財産の種類 | 延納期間(最長) | 利子税率(年) |

|-------------|--------------|-------------|

| 不動産等の割合75%以上 | 20年 | 3.6% |

| 不動産等の割合50%以上75%未満 | 15年 | 3.6% |

| 不動産等の割合50%未満 | 10年 | 6.0% |

| 動産等(一般) | 5年 | 6.0% |

※利子税率は特例基準割合に応じて変動します。2024年現在の実際の利子税率は上記より低くなっています。

延納の手続き:

延納を申請するには、相続税の申告期限までに「延納申請書」と「担保提供関係書類」を税務署に提出する必要があります。

物納制度:財産で相続税を納付する

物納とは、相続税を金銭ではなく相続した財産そのもので納付する制度です。

物納の要件:

1. 延納によっても金銭で納付することが困難であること

2. 物納申請財産が物納適格財産であること

3. 物納申請財産の管理・処分が適切であること

物納できる財産の優先順位:

| 順位 | 財産の種類 |

|-----|---------|

| 第1順位 | 不動産・船舶・国債・地方債・上場株式等 |

| 第2順位 | 非上場株式等 |

| 第3順位 | 動産 |

物納できない財産(物納不適格財産):

  • 担保権が設定されている財産
  • 権利の帰属について争いがある財産
  • 境界が明らかでない土地
  • 管理・処分に費用がかかりすぎる財産

物納の評価額:

物納する財産の評価額は、相続税評価額(路線価等)が適用されます。時価より相続税評価額が低い場合(例:路線価が時価の80%程度の場合)、物納は実質的に有利になります。

延納・物納の選択戦略

延納と物納のどちらが有利かは、以下の観点から判断します。

延納が有利なケース:

  • 将来的に不動産を売却して納税資金を確保できる見込みがある
  • 物納する財産の時価が相続税評価額を大幅に上回っている(物納すると損)
  • 延納利子税率が低い(現在の低金利環境では延納コストが低い)

物納が有利なケース:

  • 不動産を手放しても問題ない(活用していない土地等)
  • 相続税評価額が時価に近い財産がある
  • 延納の担保として提供できる財産がない

相続税の納税資金を事前に準備する方法

最も重要なのは、相続が発生する前に納税資金を準備しておくことです。

事前準備の主な方法:

1. 生命保険の活用 — 被相続人を被保険者、相続人を受取人とする生命保険に加入することで、相続発生時に死亡保険金として納税資金を受け取れます。死亡保険金には非課税枠(500万円×法定相続人数)があり、相続税の節税にもなります。

2. 計画的な生前贈与 — 毎年110万円の基礎控除を活用した生前贈与により、相続財産を減らしながら相続人に資金を移転できます。

3. 不動産の売却・組み替え — 相続前に活用していない不動産を売却し、現金化しておくことで相続税の納税資金を確保できます。

4. 相続税の試算と早期対策 — 相続税の試算を行い、予想される相続税額に対して十分な現金・流動資産があるかを確認し、不足する場合は早期に対策を講じることが重要です。

まとめ

相続税の物納・延納制度は、現金不足の場合の「最後の手段」として有効ですが、手続きが複雑で条件も厳しいため、事前の準備が何より重要です。相続税の試算を早期に行い、納税資金の確保策を税理士と一緒に検討することをお勧めします。

よくある質問(FAQ)

Q: 相続税の基礎控除額はいくらですか?

相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。例えば法定相続人が3人の場合、3,000万円+1,800万円=4,800万円が基礎控除額となり、遺産総額がこれを超えた場合に相続税が課税されます。

Q: 生前贈与で相続税を節税できますか?

生前贈与は相続税節税の有効な手段です。年間110万円の暦年贈与非課税枠を活用することで、毎年少しずつ財産を移転できます。ただし、2024年の税制改正により、相続前7年以内の贈与は相続財産に加算される点に注意が必要です。

Q: 相続税申告の期限はいつですか?

相続税の申告・納付期限は、相続の開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限を過ぎると延滞税・加算税が課される場合があるため、早めに税理士に相談することをお勧めします。

Q: 小規模宅地等の特例とはどのような制度ですか?

小規模宅地等の特例は、被相続人が居住・事業に使用していた宅地について、相続税評価額を最大80%減額できる制度です。特定居住用宅地等(330㎡まで80%減)、特定事業用宅地等(400㎡まで80%減)などの区分があり、要件を満たせば大幅な節税が可能です。

#相続税#物納#延納#納税資金#相続対策
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