所得税節税
2026年2月26日4分で読める2

配当所得の申告方式の選択:総合課税・申告分離課税・確定申告不要制度の最適化

伊藤 誠

税理士・中小企業診断士

配当所得の申告方式の選択:総合課税・申告分離課税・確定申告不要制度の最適化

はじめに

上場株式の配当所得は、受け取り方法や申告方式によって税負担が大きく異なります。総合課税・申告分離課税・確定申告不要制度の3つの申告方式から選択でき、所得水準や保有株式数によって最適な方式が変わります。本記事では、各申告方式の特徴と最適な選択方法を詳しく解説します。

3つの申告方式の比較

| 申告方式 | 税率 | 住民税 | 適用条件 | メリット |

|---|---|---|---|---|

| 確定申告不要制度 | 所得税15%+住民税5%=20.315% | 5% | 特定口座(源泉徴収あり) | 申告不要・手続き簡単 |

| 申告分離課税 | 所得税15%+住民税5%=20.315% | 5% | 確定申告が必要 | 損益通算・繰越控除が可能 |

| 総合課税 | 累進税率(5〜45%)+住民税10% | 10% | 確定申告が必要 | 低所得者は税率が低くなる可能性 |

総合課税が有利になるケース

総合課税では、配当控除(所得税10%・住民税2.8%)を受けることができます。課税所得が低い場合、総合課税の実質税率が申告分離課税(20.315%)より低くなることがあります。

総合課税の実質税率(配当控除後):

  • 課税所得195万円以下:5%(所得税)+10%(住民税)-10%(配当控除)-2.8%(住民税配当控除)=2.2%
  • 課税所得195万〜330万円:10%-10%+10%-2.8%=7.2%
  • 課税所得330万〜695万円:20%-10%+10%-2.8%=17.2%
  • 課税所得695万〜900万円:23%-10%+10%-2.8%=20.2%
  • 課税所得900万円超:申告分離課税(20.315%)の方が有利

ステップ1: 自分の課税所得を把握する

給与所得・事業所得・不動産所得等の合計から各種控除を差し引いた課税所得を把握します。

ステップ2: 配当控除後の実質税率を計算する

課税所得が695万円以下の場合、総合課税の実質税率が申告分離課税より低くなる可能性があります。

ステップ3: 住民税の申告方式も検討する

2023年分から、所得税と住民税で異なる申告方式を選択できなくなりました(一体化)。この点に注意して申告方式を選択してください。

配偶者控除・扶養控除への影響

総合課税を選択すると、配当所得が合計所得金額に含まれます。これにより、配偶者控除・扶養控除・各種所得控除の適用に影響が出る場合があります。

| 影響を受ける控除 | 合計所得金額の基準 | 注意点 |

|---|---|---|

| 配偶者控除 | 48万円以下 | 配当所得が加算されると控除が受けられなくなる可能性 |

| 扶養控除 | 48万円以下 | 学生・親族が配当を受け取る場合に注意 |

| 基礎控除 | 2,500万円以下 | 高所得者は基礎控除が段階的に減少 |

| 国民健康保険料 | 合計所得金額に連動 | 総合課税を選択すると保険料が増加する可能性 |

損益通算と繰越控除

申告分離課税を選択した場合、上場株式の譲渡損失と配当所得を損益通算できます。また、損失を翌年以降3年間繰り越すことも可能です。

損益通算の例:

  • 株式譲渡損失:-100万円
  • 配当所得:50万円
  • 損益通算後の課税所得:-50万円(翌年以降に繰越)

よくある質問(FAQ)

Q1. 特定口座(源泉徴収あり)で確定申告不要を選択した場合、後から申告方式を変更できますか?

A1. 確定申告期限(翌年3月15日)までであれば、申告方式を変更することができます。ただし、一度確定申告を提出した後は原則として変更できません。

Q2. NISA口座の配当は申告方式の選択対象になりますか?

A2. NISA口座内の配当は非課税のため、申告方式の選択は不要です。ただし、NISA口座の配当を総合課税で申告することはできません。

Q3. 外国株の配当は総合課税を選択できますか?

A3. 外国株の配当は原則として総合課税の対象ですが、外国税額控除の適用を受けるために確定申告が必要です。

Q4. 課税所得が695万円を超える場合、申告分離課税が必ず有利ですか?

A4. 課税所得が695万円超でも、外国税額控除の活用や損益通算のために総合課税を選択するケースがあります。個別の状況に応じて判断してください。

Q5. 配当所得の申告方式の選択は、毎年変更できますか?

A5. 毎年の確定申告で申告方式を選択できます。年度によって最適な方式が変わる場合があるため、毎年シミュレーションして判断することをお勧めします。

まとめ:所得水準に応じた最適な申告方式を選択

配当所得の申告方式は、課税所得695万円を境に最適な方式が変わります。695万円以下では総合課税(配当控除活用)、695万円超では申告分離課税(20.315%)が有利になるケースが多いです。ただし、配偶者控除・国民健康保険料への影響も考慮した総合的な判断が必要です。税理士に相談して最適な申告方式を選択することをお勧めします。

Q&A よくある質問

Q

特定口座(源泉徴収あり)で確定申告不要を選択した場合、後から申告方式を変更できますか?

A

確定申告期限(翌年3月15日)までであれば、申告方式を変更することができます。ただし、一度確定申告を提出した後は原則として変更できません。

Q

NISA口座の配当は申告方式の選択対象になりますか?

A

NISA口座内の配当は非課税のため、申告方式の選択は不要です。ただし、NISA口座の配当を総合課税で申告することはできません。

Q

外国株の配当は総合課税を選択できますか?

A

外国株の配当は原則として総合課税の対象ですが、外国税額控除の適用を受けるために確定申告が必要です。

Q

課税所得が695万円を超える場合、申告分離課税が必ず有利ですか?

A

課税所得が695万円超でも、外国税額控除の活用や損益通算のために総合課税を選択するケースがあります。個別の状況に応じて判断してください。

Q

配当所得の申告方式の選択は、毎年変更できますか?

A

毎年の確定申告で申告方式を選択できます。年度によって最適な方式が変わる場合があるため、毎年シミュレーションして判断することをお勧めします。

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