所得税節税
2026年3月25日4分で読める3

所得税の予定納税:減額申請の方法と節税・資金繰りへの影響

田中雅彦

税理士・公認会計士

所得税の予定納税:減額申請の方法と節税・資金繰りへの影響

# 所得税の予定納税:減額申請の方法と節税・資金繰りへの影響

予定納税とは

予定納税とは、前年の所得税額が一定額(15万円)以上の場合に、当年の所得税の一部を前払いする制度です。個人事業主・フリーランス・不動産オーナーなど、確定申告で所得税を納付している方が対象となります。

予定納税の仕組み

予定納税の基準となる金額(予定納税基準額)は、前年の確定申告の所得税額から源泉徴収税額を差し引いた金額です。

予定納税の納付時期と金額:

| 納付時期 | 納付金額 | 期限 |

|---------|---------|------|

| 第1期 | 予定納税基準額の1/3 | 7月31日 |

| 第2期 | 予定納税基準額の1/3 | 11月30日 |

| 確定申告 | 残額(精算) | 翌年3月15日 |

例:前年の所得税額が90万円(源泉徴収なし)の場合

  • 第1期:30万円(7月31日まで)
  • 第2期:30万円(11月30日まで)
  • 確定申告:精算(実際の税額 − 60万円)

予定納税の対象者

以下の条件をすべて満たす方が予定納税の対象となります。

1. 前年分の所得税・復興特別所得税の合計額が15万円以上

2. 確定申告が必要な方(給与所得のみの方は原則対象外)

主な対象者:

  • 個人事業主・フリーランス
  • 不動産収入がある方
  • 株式・投資信託の売却益がある方
  • 副業収入が多い会社員

予定納税の減額申請

減額申請が有効なケース

当年の所得が前年より大幅に減少する見込みの場合、予定納税の減額申請をすることができます。

減額申請が有効な主なケース:

  • 事業の業績が悪化した
  • 不動産収入が減少した
  • 大きな経費支出があった
  • 廃業・休業した
  • 各種控除が増加した(医療費控除、寄附金控除等)

減額申請の手続き

申請期限:

  • 第1期分の減額申請:7月1日〜7月15日
  • 第2期分の減額申請:11月1日〜11月15日

申請方法:

1. 「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」を作成

2. 税務署に提出(郵送・e-Taxでも可)

3. 税務署が承認すれば、減額後の金額を納付

申請書に記載する内容:

  • 当年の見込み所得金額
  • 各種控除の見込み額
  • 減額申請後の予定納税額

減額申請の計算方法

減額申請後の予定納税額は、当年の見込み所得に基づいて計算します。

計算式:

減額後の予定納税額 =(当年の見込み所得税額 − 当年の見込み源泉徴収税額)× 1/3

例:前年所得税90万円 → 当年見込み所得税30万円の場合

  • 減額前:各期30万円(合計60万円)
  • 減額後:各期10万円(合計20万円)
  • 節税(前払い減少)効果:40万円の資金繰り改善

予定納税と資金繰りの関係

予定納税が資金繰りを圧迫するケース

予定納税は前払いであるため、当年の所得が前年より少ない場合、過剰な前払いが生じます。この過剰分は翌年の確定申告で還付されますが、それまでの間、資金が拘束されます。

特に資金繰りへの影響が大きいケース:

  • 事業の売上が大幅に減少した年
  • 設備投資などで大きな経費が発生した年
  • 不動産の売却損が生じた年

減額申請による資金繰り改善

減額申請を活用することで、不要な前払いを避け、手元資金を確保できます。

資金繰り改善の効果:

  • 7月・11月の納税額を減らせる
  • 還付待ちの期間をなくせる
  • 事業資金として活用できる

予定納税の延滞税・加算税

予定納税を納付しなかった場合

予定納税を期限内に納付しなかった場合、延滞税が課されます。

延滞税の税率(2026年現在):

  • 納期限から2ヶ月以内:年2.4%
  • 納期限から2ヶ月超:年8.7%

減額申請が却下された場合

税務署が減額申請を却下した場合は、当初の予定納税額を期限内に納付する必要があります。却下通知が届いたら速やかに納付しましょう。

予定納税の節税活用

小規模企業共済・iDeCoの活用

予定納税の計算基礎となる前年の所得税額を減らすことで、翌年の予定納税額を減らすことができます。

前年の節税が翌年の予定納税を減らす:

  • 小規模企業共済の掛金(全額所得控除)
  • iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金(全額所得控除)
  • 青色申告特別控除(最大65万円)

経費の前倒し計上

当年の所得を減らすために、12月末までに経費を前倒しで計上することも有効です。これにより確定申告での納税額を減らすとともに、翌年の予定納税額も減らせます。

まとめ

予定納税は個人事業主・フリーランスにとって資金繰りに大きな影響を与える制度です。当年の所得が前年より減少する見込みがある場合は、7月15日・11月15日の申請期限までに減額申請を行いましょう。

予定納税対策のポイント:

1. 前年の所得税額を確認し、予定納税の対象か確認する

2. 当年の所得見込みを早めに試算する

3. 所得減少が見込まれる場合は期限内に減額申請を行う

4. 小規模企業共済・iDeCoで前年の所得を減らし、翌年の予定納税を減らす

#予定納税#減額申請#資金繰り#個人事業主#所得税
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