法人税節税
2026年2月28日5分で読める1

役員賞与の損金算入:事前確定届出給与の完全ガイドと節税効果

山田 恵子

税理士・CFP

役員賞与の損金算入:事前確定届出給与の完全ガイドと節税効果

はじめに

役員賞与は、通常の法人税法上では損金算入が認められない「利益処分」として扱われます。しかし、事前確定届出給与の制度を活用することで、役員賞与を損金算入し、法人税を大幅に節税することが可能です。本記事では、事前確定届出給与の仕組み・届出手続き・実務上の注意点を詳しく解説します。

事前確定届出給与とは?基本的な仕組み

事前確定届出給与とは、役員に対してあらかじめ定めた日時・金額で支給することを税務署に届け出た給与のことです。法人税法第34条第1項第2号に規定されており、この制度を利用することで役員賞与を損金算入できます。

通常の役員賞与との違い

| 項目 | 通常の役員賞与 | 事前確定届出給与 |

|------|--------------|----------------|

| 損金算入 | 不可 | 可能 |

| 届出 | 不要 | 必要(期限あり) |

| 金額変更 | 自由 | 原則不可 |

| 支給時期 | 自由 | 届出通りに支給 |

損金算入の要件

事前確定届出給与が損金算入されるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

1. 届出書の提出:所轄税務署に期限内に届出書を提出していること

2. 届出通りの支給:届出書に記載した日時・金額通りに支給すること

3. 利益連動でないこと:業績に連動した支給額の変動がないこと

届出期限と手続きの詳細

届出期限

事前確定届出給与の届出期限は、以下のいずれか早い日です。

  • 株主総会等の決議日から1ヶ月以内
  • 事業年度開始の日から4ヶ月以内

例えば、3月決算法人(4月1日〜3月31日)の場合、株主総会を6月末に開催するとすれば、届出期限は7月末(決議日から1ヶ月)または7月31日(事業年度開始から4ヶ月)となります。

届出書の記載事項

届出書には以下の事項を記載します。

  • 役員の氏名・役職
  • 支給額(金額)
  • 支給日(具体的な年月日)
  • 支給方法(現金・振込等)

変更届出

一度届け出た内容を変更する場合は、変更届出書を提出する必要があります。ただし、変更できる期間は限られており、原則として当初の届出期限までです。

節税効果のシミュレーション

具体的な計算例

法人所得が5,000万円の中小企業(実効税率25%)が、役員に500万円の賞与を支給する場合を比較します。

事前確定届出給与を利用しない場合:

  • 法人所得:5,000万円
  • 法人税:5,000万円 × 25% = 1,250万円
  • 役員賞与:500万円(税引後利益から支給)

事前確定届出給与を利用した場合:

  • 法人所得:5,000万円 − 500万円 = 4,500万円
  • 法人税:4,500万円 × 25% = 1,125万円
  • 節税額:125万円

さらに、役員個人の所得税・住民税との税率差を考慮すると、より大きな節税効果が期待できます。

実務上の注意点とリスク

支給額・支給日の厳守

事前確定届出給与の最大のリスクは、届出通りに支給しなかった場合に全額が損金不算入になることです。1円でも金額が異なったり、1日でも支給日がずれたりすると、損金算入が認められません。

業績悪化時の対応

業績が悪化し、届出通りの賞与支給が困難になった場合でも、原則として支給額の変更はできません。ただし、業績悪化改定事由に該当する場合は、例外的に変更が認められることがあります。

業績悪化改定事由とは、経営状況の著しい悪化等により、役員給与の額を減額せざるを得ない事情がある場合です。

税務調査での指摘事項

税務調査では、以下の点が指摘されることがあります。

  • 届出書の提出漏れ・期限超過
  • 支給額・支給日の不一致
  • 実質的な利益連動給与への該当性
  • 不相当に高額な役員給与への該当性

利益連動給与との比較

利益連動給与は、業績に連動した役員給与で、一定の要件を満たすことで損金算入が認められます。

| 項目 | 事前確定届出給与 | 利益連動給与 |

|------|----------------|------------|

| 対象法人 | すべての法人 | 同族会社以外 |

| 算定方法 | 固定額 | 利益連動 |

| 透明性要件 | 不要 | 有価証券報告書等への記載 |

| 適用しやすさ | 高い | 低い(上場企業等向け) |

中小企業・同族会社では、利益連動給与は利用できないため、事前確定届出給与が主要な選択肢となります。

実践的な活用戦略

決算賞与との組み合わせ

事前確定届出給与を活用した決算賞与の支給は、法人税節税の定番戦略です。期末に利益が見込まれる場合、事前に届け出た金額の賞与を支給することで、法人所得を圧縮できます。

役員報酬との最適化

役員報酬(定期同額給与)と事前確定届出給与を組み合わせることで、役員個人の所得を平準化し、累進課税の影響を軽減できます。

複数役員への活用

代表取締役だけでなく、取締役・監査役等の複数の役員に対して事前確定届出給与を設定することで、法人全体の節税効果を高めることができます。

よくある質問(FAQ)

Q1: 事前確定届出給与の届出書はどこに提出しますか?

A1: 法人の本店所在地を管轄する税務署に提出します。e-Taxでの電子申告も可能です。

Q2: 支給日が土日祝日に当たる場合はどうすればよいですか?

A2: 届出書に記載した支給日が土日祝日の場合、翌営業日に支給することが認められています。ただし、届出書には「〇月〇日(翌営業日)」と記載することが望ましいです。

Q3: 役員が途中で退任した場合、賞与は支給できますか?

A3: 退任前に届出通りの支給日が到来していれば支給可能ですが、退任後の支給日については損金算入が認められない可能性があります。

Q4: 事前確定届出給与と定期同額給与を同時に設定できますか?

A4: はい、同時に設定することができます。定期同額給与は毎月の役員報酬、事前確定届出給与は賞与として、それぞれ独立して損金算入が認められます。

Q5: 非常勤役員にも事前確定届出給与を設定できますか?

A5: はい、非常勤役員(社外取締役等)にも設定できます。ただし、支給額が不相当に高額でないことが必要です。

まとめ

事前確定届出給与は、法人税節税の有効な手段ですが、届出期限の厳守と支給額・支給日の正確な実行が不可欠です。一度でも届出通りに支給できなければ、全額が損金不算入となるリスクがあります。

税理士と連携して、届出書の作成・提出から支給管理まで、適切に運用することをお勧めします。当メディアでは、法人税節税に関する最新情報を継続的に発信しています。無料相談もご活用ください。

Q&A よくある質問

Q

事前確定届出給与の届出書はどこに提出しますか?

A

法人の本店所在地を管轄する税務署に提出します。e-Taxでの電子申告も可能です。

Q

支給日が土日祝日に当たる場合はどうすればよいですか?

A

届出書に記載した支給日が土日祝日の場合、翌営業日に支給することが認められています。ただし、届出書には「〇月〇日(翌営業日)」と記載することが望ましいです。

Q

役員が途中で退任した場合、賞与は支給できますか?

A

退任前に届出通りの支給日が到来していれば支給可能ですが、退任後の支給日については損金算入が認められない可能性があります。

Q

事前確定届出給与と定期同額給与を同時に設定できますか?

A

はい、同時に設定することができます。定期同額給与は毎月の役員報酬、事前確定届出給与は賞与として、それぞれ独立して損金算入が認められます。

Q

非常勤役員にも事前確定届出給与を設定できますか?

A

はい、非常勤役員(社外取締役等)にも設定できます。ただし、支給額が不相当に高額でないことが必要です。

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