相続税対策
2026年4月5日6分で読める10

事業承継税制(特例措置)の完全ガイド|自社株100%納税猶予で相続税ゼロを実現する方法

専門家監修記事
伊藤 誠

伊藤 誠

税理士登録番号 第67890号

税理士・中小企業診断士

専門分野:法人節税・事業承継

経験19年
相談実績340件以上
伊藤誠税理士・中小企業診断士事務所

中小企業診断士と税理士の資格を活かし、経営改善と節税を一体的に支援。製造業・建設業の事業承継案件に豊富な実績を持ち、自社株評価の引き下げ戦略が得意。名古屋を拠点に東海地方の中小企業オーナーから厚い信頼を得ている。

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# 事業承継税制(特例措置)の完全ガイド|自社株100%納税猶予で相続税ゼロを実現する方法

はじめに

中小企業オーナーにとって、自社株の相続は最大の相続税対策課題の一つです。事業承継税制(特例措置)を活用することで、自社株に係る相続税・贈与税の100%を猶予(実質免除)することができます。

本記事では、事業承継税制の仕組み・適用要件・手続き・リスク管理まで、実務目線で解説します。

---

事業承継税制とは

事業承継税制とは、中小企業の後継者が先代経営者から自社株を相続・贈与により取得した場合に、その株式に係る相続税・贈与税の納税を猶予する制度です。

一般措置と特例措置の違い

| 比較項目 | 一般措置 | 特例措置 |

|---|---|---|

| 猶予割合 | 80%(相続)・100%(贈与) | 100% |

| 対象株数 | 発行済株式総数の2/3まで | 全株式 |

| 雇用確保要件 | 5年間平均80%以上 | 実質的に緩和 |

| 適用期限 | なし | 2027年3月31日までに計画提出 |

特例措置は2027年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県知事に提出する必要があります。この期限を過ぎると特例措置は利用できなくなるため、早急な対応が必要です。

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適用要件

先代経営者(贈与者・被相続人)の要件

1. 会社の代表者であったこと

2. 贈与・相続開始直前に、後継者と合わせて発行済株式総数の50%超を保有し、かつ筆頭株主であったこと

後継者(受贈者・相続人)の要件

1. 会社の代表者であること(贈与の場合は贈与後)

2. 贈与・相続開始直前(相続の場合は相続開始時)に、後継者と合わせて発行済株式総数の50%超を保有し、かつ筆頭株主であること

3. 18歳以上であること(贈与の場合)

4. 贈与の直前において3年以上継続して会社の役員であること

会社の要件

1. 中小企業者に該当すること

2. 上場会社でないこと

3. 風俗営業会社でないこと

4. 資産管理会社でないこと(一定の要件を満たす場合は適用可)

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手続きの流れ

特例措置の場合

1. 特例承継計画の策定・提出(2027年3月31日まで)

- 認定経営革新等支援機関(税理士・金融機関など)の指導・助言を受けて策定

- 都道府県知事に提出・確認を受ける

2. 贈与・相続の実行(2027年12月31日まで)

3. 都道府県知事の認定申請(贈与・相続後8ヶ月以内)

4. 税務署への申告(贈与税:翌年3月15日まで、相続税:10ヶ月以内)

5. 継続届出書の提出(毎年・3年毎)

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猶予税額が免除される条件

猶予された税額は、以下の場合に免除されます。

1. 後継者が死亡した場合

2. 次の後継者への贈与を行った場合(次世代への事業承継)

3. 会社が破産・解散した場合(一定の条件あり)

4. 特例措置の場合、後継者が70歳になるまで事業を継続した場合(一定の要件あり)

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リスクと対策

リスク1:猶予取消しによる税額の一括納付

以下の場合、猶予が取り消され、猶予税額と利子税を一括で納付しなければなりません。

  • 後継者が代表者でなくなった場合
  • 猶予対象株式を譲渡した場合(一定割合以上)
  • 雇用確保要件を満たさなかった場合(一般措置)

対策:

  • 猶予取消しリスクに備えた納税資金の確保(生命保険の活用)
  • 事業継続に関する定期的な専門家チェック
  • 株式の分散防止策(定款変更・株式譲渡制限の設定)

リスク2:資産管理会社への該当

不動産・有価証券などの資産を多く保有する会社は「資産管理会社」に該当し、原則として事業承継税制の適用対象外となります。

対策:

  • 事業実態の強化(従業員の雇用・事業収入の確保)
  • 事業承継前に資産管理会社に該当しないよう資産構成を見直す

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事業承継税制と他の対策の組み合わせ

事業承継税制は単独で活用するだけでなく、他の手法と組み合わせることで、より効果的な事業承継が実現できます。

  • 事業承継税制 × 持株会社スキーム: 持株会社を設立して株式を集約した上で事業承継税制を適用
  • 事業承継税制 × 家族信託: 自社株を信託財産として管理しながら事業承継税制を活用
  • 事業承継税制 × 生命保険: 猶予取消しリスクに備えた納税資金を生命保険で確保

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まとめ

事業承継税制(特例措置)は、中小企業オーナーにとって自社株の相続税・贈与税を実質ゼロにできる強力な制度です。ただし、適用要件・手続き・継続要件が複雑であり、2027年3月31日という特例計画提出期限もあります。

早急に認定経営革新等支援機関(税理士など)に相談し、特例承継計画の策定を開始することをお勧めします。

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*本記事は2026年4月時点の税制に基づいています。実際の事業承継については必ず専門家にご相談ください。*

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よくある質問(FAQ)

Q: 事業承継税制の特例措置と一般措置の違いは何ですか?

A: 特例措置は2018年から2027年末までの時限措置で、一般措置より大幅に優遇されています。主な違いは、特例措置では株式の100%(一般措置は2/3まで)について相続税・贈与税が猶予され、雇用確保要件(5年間で平均80%以上の雇用維持)が実質的に緩和されています。また、特例措置は複数の後継者(最大3人)への承継も可能です。特例措置を利用するには、2024年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります(2024年3月31日まで延長済み)。

Q: 事業承継税制の納税猶予が打ち切られる条件は何ですか?

A: 主な打ち切り条件として、後継者が代表者を退任した場合、猶予対象株式を一定数以上譲渡した場合、会社が解散・清算した場合、資産管理会社に該当した場合などがあります。また、特例措置では5年間の事業継続要件(毎年都道府県への報告が必要)があります。打ち切りになると、猶予されていた税額に利子税(年2.5〜0.9%)を加えて納税が必要になります。打ち切りリスクを考慮した事業計画の策定が重要です。

Q: 非上場株式の相続税評価額はどのように計算しますか?

A: 非上場株式の評価方法は、会社の規模によって異なります。大会社は「類似業種比準価額方式」(上場会社の株価を基準に、配当・利益・純資産の3要素で比較)、小会社は「純資産価額方式」(会社の純資産を基準)、中会社はその折衷で評価します。一般的に、利益が出ている会社は類似業種比準価額が低くなりやすく、含み益の多い不動産を保有する会社は純資産価額が高くなりやすいです。評価方法の選択と組み合わせにより、評価額を適正な範囲で最小化する工夫が可能です。

Q: 事業承継税制を使わずに自社株を後継者に移転する方法はありますか?

A: いくつかの方法があります。①生前贈与(暦年贈与・相続時精算課税)で少しずつ移転する、②持株会社(ホールディングス)を設立して株価を引き下げてから移転する、③従業員持株会を活用して株式を分散させる、④MBO(マネジメント・バイアウト)で後継者が会社から資金を借りて株式を買い取る、などがあります。それぞれにメリット・デメリットがあり、会社の規模・財務状況・後継者の資力によって最適な方法が異なります。

Q: 事業承継税制の申請手続きはどのように進めればよいですか?

A: まず都道府県の担当窓口に「特例承継計画」を提出します(認定経営革新等支援機関の確認が必要)。次に、贈与・相続の発生後に税務署に「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例」の申請書を提出します。その後、毎年都道府県への継続届出書の提出と、3年ごとの税務署への継続届出書の提出が必要です。手続きは複雑で専門的な知識が必要なため、事業承継に詳しい税理士・弁護士への依頼を強く推奨します。

Q&A よくある質問

Q

事業承継税制の特例措置と一般措置の違いは何ですか?

A

特例措置は2018年から2027年末までの時限措置で、一般措置より大幅に優遇されています。主な違いは、特例措置では株式の100%(一般措置は2/3まで)について相続税・贈与税が猶予され、雇用確保要件(5年間で平均80%以上の雇用維持)が実質的に緩和されています。また、特例措置は複数の後継者(最大3人)への承継も可能です。特例措置を利用するには、2024年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります(2024年3月31日まで延長済み)。

Q

事業承継税制の納税猶予が打ち切られる条件は何ですか?

A

主な打ち切り条件として、後継者が代表者を退任した場合、猶予対象株式を一定数以上譲渡した場合、会社が解散・清算した場合、資産管理会社に該当した場合などがあります。また、特例措置では5年間の事業継続要件(毎年都道府県への報告が必要)があります。打ち切りになると、猶予されていた税額に利子税(年2.5〜0.9%)を加えて納税が必要になります。打ち切りリスクを考慮した事業計画の策定が重要です。

Q

非上場株式の相続税評価額はどのように計算しますか?

A

非上場株式の評価方法は、会社の規模によって異なります。大会社は「類似業種比準価額方式」(上場会社の株価を基準に、配当・利益・純資産の3要素で比較)、小会社は「純資産価額方式」(会社の純資産を基準)、中会社はその折衷で評価します。一般的に、利益が出ている会社は類似業種比準価額が低くなりやすく、含み益の多い不動産を保有する会社は純資産価額が高くなりやすいです。評価方法の選択と組み合わせにより、評価額を適正な範囲で最小化する工夫が可能です。

Q

事業承継税制を使わずに自社株を後継者に移転する方法はありますか?

A

いくつかの方法があります。①生前贈与(暦年贈与・相続時精算課税)で少しずつ移転する、②持株会社(ホールディングス)を設立して株価を引き下げてから移転する、③従業員持株会を活用して株式を分散させる、④MBO(マネジメント・バイアウト)で後継者が会社から資金を借りて株式を買い取る、などがあります。それぞれにメリット・デメリットがあり、会社の規模・財務状況・後継者の資力によって最適な方法が異なります。

Q

事業承継税制の申請手続きはどのように進めればよいですか?

A

まず都道府県の担当窓口に「特例承継計画」を提出します(認定経営革新等支援機関の確認が必要)。次に、贈与・相続の発生後に税務署に「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例」の申請書を提出します。その後、毎年都道府県への継続届出書の提出と、3年ごとの税務署への継続届出書の提出が必要です。手続きは複雑で専門的な知識が必要なため、事業承継に詳しい税理士・弁護士への依頼を強く推奨します。

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