所得税節税
2026年3月25日5分で読める3

損益通算・繰越控除の完全ガイド:株式・FX・不動産の損失を節税に活用する方法

鈴木 大輔

ファイナンシャルプランナー・税理士

損益通算・繰越控除の完全ガイド:株式・FX・不動産の損失を節税に活用する方法

損益通算・繰越控除とは:富裕層が必ず知るべき節税の基本

投資で損失が出た場合、その損失を他の所得や翌年以降の利益と相殺できる「損益通算・繰越控除」制度は、富裕層の節税において非常に重要な仕組みです。本記事では、株式・FX・不動産など各投資カテゴリの損益通算ルールを体系的に解説します。

損益通算の基本的な仕組み

損益通算とは

損益通算とは、同一年内に生じた各種所得の黒字と赤字を相殺することです。ただし、すべての所得を自由に通算できるわけではなく、所得の種類によって通算できる範囲が決まっています。

| 所得の種類 | 損益通算の可否 |

|-----------|--------------|

| 不動産所得(土地取得借入金利子を除く) | 他の所得と通算可 |

| 事業所得 | 他の所得と通算可 |

| 山林所得 | 他の所得と通算可 |

| 譲渡所得(土地・建物) | 分離課税のため限定的 |

| 上場株式等の譲渡損失 | 配当所得・利子所得と通算可 |

| FX(外国為替証拠金取引) | 先物取引の雑所得と通算可 |

| 仮想通貨(暗号資産) | 原則として他の雑所得と通算可 |

繰越控除とは

繰越控除とは、損益通算を行っても控除しきれなかった損失を、翌年以降3年間にわたって繰り越し、各年の所得から控除できる制度です。

上場株式等の損益通算と繰越控除

上場株式等の損益通算の範囲

上場株式等(国内・海外の上場株式、ETF、REIT等)の譲渡損失は、以下の所得と損益通算できます。

  • 上場株式等の配当所得(申告分離課税を選択した場合)
  • 特定公社債等の利子所得・譲渡所得

重要: 上場株式等の損失は、一般株式等(非上場株式)の譲渡所得とは通算できません。

繰越控除の手続き

上場株式等の繰越損失は、以下の手順で申告します。

1. 損失が発生した年: 確定申告書に「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」と「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除等の計算明細書」を添付して申告します。

2. 翌年以降: 損失を繰り越すためには、損失が発生した年から毎年確定申告を行う必要があります(所得がゼロでも申告が必要)。

3. 控除の適用: 翌年以降に上場株式等の譲渡益や配当所得が発生した場合、繰越損失と相殺します。

節税効果の試算

例えば、前年に上場株式の譲渡損失が500万円発生し、当年に上場株式の譲渡益が300万円・配当所得が100万円(申告分離課税選択)発生した場合:

  • 繰越損失500万円 - 譲渡益300万円 - 配当所得100万円 = 残余繰越損失100万円
  • 当年の税負担:ゼロ(全額相殺)
  • 翌年以降に繰り越せる損失:100万円

FX・先物取引の損益通算

FXの税務上の取り扱い

FX(外国為替証拠金取引)の損益は、「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税(税率20.315%)の対象となります。

FXの損失は、以下の所得と損益通算できます。

  • 他のFX取引の利益
  • 商品先物取引の利益
  • 日経225先物・オプション取引の利益
  • 金融商品先物取引の利益

注意: FXの損失は、給与所得・不動産所得などの総合課税の所得とは通算できません。

FXの繰越控除

FXの損失は、翌年以降3年間繰り越すことができます。繰越控除を受けるためには、損失が発生した年から毎年確定申告を行う必要があります。

不動産所得の損益通算

不動産所得の損失と損益通算

不動産投資(賃貸収入)で損失が発生した場合、原則として他の所得(給与所得・事業所得等)と損益通算できます。

ただし、以下の場合は損益通算が制限されます:

  • 土地取得のための借入金利子: 土地を取得するために借り入れた資金の利子に相当する損失は、他の所得と損益通算できません。
  • 別荘等の損失: 生活に通常必要でない資産(別荘等)の損失は、損益通算できません。
  • 海外不動産の損失(2022年以降): 海外不動産の減価償却費に相当する損失は、2022年以降、国内の不動産所得の黒字を超える部分については損益通算が制限されています。

不動産所得の損失による節税効果

給与所得が2,000万円の高額所得者が、不動産投資で500万円の損失(減価償却費等)を計上した場合:

  • 損益通算後の所得:2,000万円 - 500万円 = 1,500万円
  • 節税効果:500万円 × 実効税率(約50%)= 約250万円

土地・建物の譲渡損失の特例

居住用財産の譲渡損失の繰越控除

マイホーム(居住用財産)を売却して損失が生じた場合、一定の要件を満たせば、その損失を翌年以降3年間繰り越して、給与所得等と損益通算できます。

適用要件:

  • 売却した年の1月1日において所有期間が5年超
  • 売却した年の12月31日において、住宅ローン残高が売却価格を上回っていること(オーバーローン)
  • 売却した年またはその翌年に、新たな居住用財産を取得すること

特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除

住宅ローンが残っているマイホームを売却して損失が生じた場合(オーバーローン)、損失を翌年以降3年間繰り越して、給与所得等と損益通算できます。

損益通算・繰越控除の実務上の注意点

確定申告の必要性

損益通算・繰越控除を受けるためには、必ず確定申告が必要です。特に、損失を翌年以降に繰り越すためには、損失が発生した年から毎年申告を継続する必要があります。

特定口座(源泉徴収あり)の注意点

特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、証券会社が自動的に税金を計算・納付するため、確定申告が不要な場合があります。ただし、損益通算や繰越控除を活用するためには、確定申告が必要です。

損失の活用順序

複数の損失がある場合、以下の順序で損益通算を行います。

1. 同一所得区分内での通算(例:複数の不動産所得の損益)

2. 異なる所得区分間での通算(例:不動産所得の損失と給与所得)

3. 繰越損失の控除

まとめ

損益通算・繰越控除は、投資損失を節税に活用する重要な制度です。特に複数の投資を行っている富裕層にとって、損益通算のルールを正確に理解し、確定申告で適切に申告することが、節税効果を最大化する鍵となります。毎年の確定申告を怠らず、税理士と連携して損失の最大活用を図ることをお勧めします。

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