海外資産・国際税務
2026年3月18日4分で読める1

米国の遺産税(エステートタックス)と日本人富裕層の対策2026

鈴木 大輔

税理士・国際税務専門家

米国の遺産税(エステートタックス)と日本人富裕層の対策2026

米国の遺産税(エステートタックス)の概要

米国の遺産税(Federal Estate Tax)は、亡くなった人の遺産総額に対して課される税金です。日本の相続税が「相続人」に課税されるのに対し、米国の遺産税は「遺産」(被相続人の財産)に対して課税される点が異なります。

2026年現在、米国の遺産税の基礎控除額は約1,360万ドル(約20億円)と非常に高く、大多数の米国市民には課税されません。しかし、日本人(非居住外国人)が米国資産を保有する場合、基礎控除額はわずか6万ドル(約900万円)となり、米国資産が6万ドルを超えると遺産税が課される可能性があります。

| 対象者 | 基礎控除額 | 最高税率 |

|---|---|---|

| 米国市民・永住者 | 約1,360万ドル(2026年) | 40% |

| 非居住外国人(日本人等) | 6万ドル | 40% |

| 日米租税条約適用後(日本居住者) | 条約による軽減あり | 40% |

日本人が米国遺産税の対象となる米国資産

非居住外国人(日本居住の日本人)が保有する以下の資産は、米国遺産税の対象となります。

米国遺産税の対象となる主な資産

  • 米国所在の不動産
  • 米国法人の株式(米国上場株式含む)
  • 米国銀行の預金(一部例外あり)
  • 米国所在の動産(自動車・美術品等)

米国遺産税の対象外となる主な資産

  • 米国銀行の普通預金(非居住外国人の場合)
  • 米国国債・地方債
  • 外国法人の株式(米国上場でも外国法人は対象外)

日米相続税条約の活用

日本と米国の間には相続税条約(1954年締結、2003年改正)が締結されています。この条約により、日本居住者の米国遺産税負担が軽減されます。

条約の主なメリット

1. 統一控除の按分適用:米国市民の基礎控除額(約1,360万ドル)を、世界全体の財産に対する米国財産の割合で按分して適用できます。

2. 二重課税の排除:日本で相続税を支払った場合、米国遺産税から日本の相続税相当額を控除できます。

ステップ1:条約の適用申請

日米相続税条約の適用を受けるには、米国の遺産税申告書(Form 706-NA)に条約適用の選択を記載する必要があります。

ステップ2:二重課税の計算

日米両国で課税される場合、外国税額控除を活用して二重課税を排除します。

米国遺産税の対策スキーム

米国法人(LLC・Corporation)を通じた保有

米国不動産を個人で直接保有するのではなく、外国法人(日本法人・英領バージン諸島法人等)を通じて保有することで、米国遺産税の対象から外れる場合があります。

理由:非居住外国人が保有する外国法人の株式は、米国遺産税の対象外です。

注意点:米国不動産を外国法人を通じて保有する場合、FIRPTA(外国人不動産投資税法)による源泉徴収(売却代金の15%)が適用されます。

生命保険を活用した遺産税の支払い原資確保

米国遺産税は、遺産の清算前に現金で支払う必要があります。流動性の低い不動産等を保有する場合、生命保険を活用して遺産税の支払い原資を確保することが重要です。

信託(Irrevocable Life Insurance Trust)の活用

取消不能生命保険信託(ILIT)を設定することで、生命保険の死亡保険金を遺産税の対象から外すことができます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 米国株式(ETF含む)を保有している日本人は米国遺産税の対象ですか?

A1. 米国法人の株式(米国上場ETF含む)は米国遺産税の対象です。ただし、外国法人(アイルランド籍ETF等)の株式は対象外です。

Q2. 米国遺産税の申告期限はいつですか?

A2. 被相続人の死亡から9ヶ月以内に申告・納付が必要です。6ヶ月の延長申請が可能です。

Q3. 米国不動産を外国法人で保有すれば米国遺産税は完全に回避できますか?

A3. 外国法人を通じた保有は米国遺産税の回避に有効ですが、米国IRSが「実質的な所有者は個人」と判断した場合(スキームの実態がない場合)は否認されるリスクがあります。

Q4. 日米相続税条約を適用すると、どのくらい遺産税が軽減されますか?

A4. 条約適用により、米国財産の割合に応じた按分控除が受けられます。例えば、世界全体の財産2億ドルのうち米国財産が5,000万ドルの場合、基礎控除は約340万ドル(1,360万ドル×25%)となります。

Q5. 2026年以降、米国遺産税の基礎控除額は変わりますか?

A5. 2017年のTCJA(税制改革法)による基礎控除の倍増措置は2025年末に失効する予定でしたが、2026年の税制改正で延長・恒久化される可能性があります。最新情報の確認が必要です。

Q&A よくある質問

Q

米国株式(ETF含む)を保有している日本人は米国遺産税の対象ですか?

A

米国法人の株式(米国上場ETF含む)は米国遺産税の対象です。ただし、外国法人(アイルランド籍ETF等)の株式は対象外です。

Q

米国遺産税の申告期限はいつですか?

A

被相続人の死亡から9ヶ月以内に申告・納付が必要です。6ヶ月の延長申請が可能です。

Q

米国不動産を外国法人で保有すれば米国遺産税は完全に回避できますか?

A

外国法人を通じた保有は米国遺産税の回避に有効ですが、米国IRSが「実質的な所有者は個人」と判断した場合(スキームの実態がない場合)は否認されるリスクがあります。

Q

日米相続税条約を適用すると、どのくらい遺産税が軽減されますか?

A

条約適用により、米国財産の割合に応じた按分控除が受けられます。例えば、世界全体の財産2億ドルのうち米国財産が5,000万ドルの場合、基礎控除は約340万ドル(1,360万ドル×25%)となります。

Q

2026年以降、米国遺産税の基礎控除額は変わりますか?

A

2017年のTCJA(税制改革法)による基礎控除の倍増措置は2025年末に失効する予定でしたが、2026年の税制改正で延長・恒久化される可能性があります。最新情報の確認が必要です。

#米国遺産税#国際税務#相続税対策#日米租税条約#海外資産
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