# 【現金がなくても大丈夫】相続税の物納制度——現金不足時に不動産で納税する方法と申請手続きの完全ガイド
1. リード文
相続税の納税資金不足に悩む富裕層の皆様へ。多額の相続税が発生した際、手元に十分な現金がないという状況は決して珍しくありません。しかし、ご安心ください。本記事では、現金がなくても不動産などの相続財産そのもので相続税を納めることができる「物納制度」について、2024年から2025年にかけての最新税制改正情報も踏まえ、その概要から具体的な手続き、メリット・デメリット、そして賢い活用法までを徹底解説します。納税資金の確保に不安を感じている方、特に不動産を多く相続された方は、ぜひ最後までご一読いただき、円滑な相続税納税への道筋を見つけてください。
2. 相続税の物納制度とは?基本を理解する
2.1. 物納制度の概要と目的
相続税は、原則として金銭で一括納付することが義務付けられている国税です。しかし、相続財産の大部分が不動産や非上場株式などの換金しにくい資産である場合、納税資金の準備が困難になることがあります。このような状況において、納税者の負担を軽減し、相続財産の円滑な承継を支援するために設けられているのが物納制度です [1]。
物納制度は、延納(相続税を分割して納付する方法)によっても金銭で納付することが困難な場合に限り、その困難な金額を限度として、一定の相続財産をもって相続税を納めることを認めるものです。国税庁の発表によると、令和6年度(2024年度)の相続税の物納申請件数は50件と、前年度から大幅に増加しており、現金不足に悩む納税者にとって重要な選択肢となっています [2]。
2.2. 延納との違いと物納が選択されるケース
相続税の納税が困難な場合の対処法として、物納の他に延納があります。延納は、相続税を年賦で分割して納付する方法であり、物納よりも優先的に検討されるべき手段です。延納が認められるためには、相続税額が10万円を超え、金銭で一括納付が困難であること、担保を提供することなどの要件を満たす必要があります [3]。
物納は、この延納によっても金銭で納付することが困難な場合に、最終手段として選択される制度です。具体的には、以下のようなケースで物納が検討されます。
* 相続財産のほとんどが不動産であり、売却が困難または不利な場合。
* 非上場株式など、市場での換金性が低い財産を多く相続した場合。
* 延納による利子税の負担が大きいと感じる場合(ただし、物納にも利子税がかかる期間があります)。
物納と延納の主な違いを以下の表にまとめます。
| 項目 | 延納 | 物納 |
| :--- | :--- | :--- |
| 納税方法 | 金銭による分割納付 | 相続財産による現物納付 |
| 優先順位 | 物納より優先 | 延納でも困難な場合の最終手段 |
| 担保 | 原則必要 | 物納財産そのものが担保の役割を果たす |
| 利子税 | 延納期間中発生 | 物納許可までの期間中発生 |
| 手続き | 物納より簡便 | 複雑で厳格な審査がある |
2.3. 2024-2025年税制改正のポイント:物納許可限度額の計算方法の変更
令和7年度税制改正により、相続税の物納制度における物納許可限度額の計算方法が見直されました。これは、納税者の実情に合わせたより適切な物納許可限度額を算定することを目的としています [4]。主な改正点は以下の通りです。
1. 延納によって納付することができる金額の計算の明確化: 従来、納期限または納付すべき日における収入金額を基に算出されていましたが、将来の収入金額の減少が確実であると見込まれる場合の計算方法が明確化されました。
2. 年間納付資力に乗ずる年数の見直し: 一律に延納可能最長年数としていたものが、課税相続財産の種類に応じた延納年数や、厚生労働省が公表する完全生命表に基づく平均余命年数を考慮した計算方法に変更されました。
3. 物納許可限度額の算定方法の変更: 改正前の物納許可限度額に、延納期間終了後における当面の生活費及び事業経費を加算した額を、改正後の物納許可限度額とすることとしました。
これらの改正は、令和7年4月1日以後の相続開始に係る申請分から適用されます。納税者にとっては、より実態に即した物納許可限度額が算定されることで、物納の選択肢が広がる可能性があります。
3. 物納できる財産・できない財産:適格要件を徹底解説
物納に充てることができる財産は、相続により取得した財産のうち、日本国内に所在するものに限られます。さらに、国が管理・処分しやすいかどうかの観点から、厳格な要件が定められています [5]。
3.1. 物納適格財産の順位と種類
物納に充てられる財産には、以下の通り優先順位が定められています。原則として、上位の順位の財産から物納に充てることになります。
| 順位 | 財産の種類 | 具体例 |
| :--- | :--- | :--- |
| 第1順位 | 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等 | 土地、建物、マンション、国債、地方債、上場企業の株式、投資信託など |
| 第2順位 | 非上場株式等 | 非上場企業の株式、出資証券など |
| 第3順位 | 動産 | 美術品、骨董品、自動車、貴金属など |
(注1)後順位の財産は、税務署長が特別の事情を認める場合や、先順位の財産に適当な価額のものがない場合に限って物納に充てることができます。
3.2. 物納不適格財産(管理処分不適格財産)とは?具体的な事例
物納に充てることができない財産を「管理処分不適格財産」と呼びます。これらは、国が管理したり処分したりすることが困難な財産であり、物納申請が却下される主な原因となります。以下に、管理処分不適格財産の具体的な事例を挙げます [5]。
* 不動産
* 担保権が設定されている不動産: 抵当権や根抵当権などが設定されている不動産は、国が処分する際に権利関係が複雑になるため、原則として物納できません。
* 権利の帰属について争いがある不動産: 相続人同士で所有権を争っているような不動産は、物納の対象外です。
* 境界が明らかでない土地: 測量や境界確定が必要な土地は、管理処分に手間がかかるため不適格とされます。
* 隣接する不動産の所有者との争訟によらなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産: 例えば、通行権の問題など、隣人とのトラブルが解決していない土地などが該当します。
* 公道に通じない土地で通行権の内容が不明確なもの: いわゆる「袋地」で、通行権が明確でない場合も物納できません。
* 借地権の目的となっている土地で、借地権者が不明なもの: 権利関係が不明瞭な土地は、管理処分が困難です。
* 他の不動産と社会通念上一体として利用されている、または利用されるべき不動産: 例えば、自宅の敷地と一体として利用されている庭園など、単独での処分が難しい不動産です。
* 耐用年数を経過している建物(通常使用できるものを除く): 著しく老朽化しており、修繕に多額の費用がかかる建物は不適格とされます。
* 敷金の返還に係る債務その他の債務を国が負担することとなる不動産: 賃貸物件で敷金返還債務がある場合など、国が新たな債務を負うことになる不動産は原則として物納できません(申請者が清算を確認できる場合を除く)。
* その管理または処分を行うために要する費用の額がその収納価額と比較して過大となると見込まれる不動産: 例えば、有害物質が埋設されている土地など、処分に多額の費用がかかる不動産です。
* 公の秩序または善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産: 違法な用途に供されている不動産は物納できません。
* 引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産: 例えば、登記が未了の不動産などです。
* 暴力団員等が権利を有する不動産: 反社会的勢力との関連がある不動産は物納できません。
* 株式
* 譲渡に関して金融商品取引法その他の法令の規定により一定の手続が定められている株式で、その手続がとられていない株式: 譲渡制限があるにもかかわらず、その手続きが未了の株式などです。
* 譲渡制限株式: 会社の承認がなければ譲渡できない株式は、処分が困難なため不適格とされます。
* 質権その他の担保権の目的となっている株式: 担保が設定されている株式は物納できません。
* 権利の帰属について争いがある株式: 誰が所有者であるか争われている株式は物納の対象外です。
* 共有に属する株式(共有者全員がその株式について物納の許可を申請する場合を除く): 複数の共有者がいる株式で、全員が物納に同意しない場合は不適格です。
* 暴力団員等によりその事業活動を支配されている株式会社が発行した株式: 反社会的勢力との関連がある企業の株式は物納できません。
3.3. 物納劣後財産とその取り扱い
物納劣後財産とは、管理処分不適格財産ではないものの、他に物納に充てるべき適当な財産がない場合に限り、物納に充てることができる財産を指します。これらの財産は、管理処分不適格財産ほどではないものの、国が処分する際に一定の困難が伴う可能性があるため、優先順位が低く設定されています [5]。
具体的な物納劣後財産の例としては、以下のようなものが挙げられます。
* 地上権、永小作権もしくは耕作を目的とする賃借権、地役権または入会権が設定されている土地。
* 法令の規定に違反して建築された建物およびその敷地。
* 土地区画整理法による土地区画整理事業などの施行に係る土地につき仮換地または一時利用地の指定がされていない土地(その指定後において使用または収益をすることができない土地を含む)。
* 現に納税義務者の居住の用または事業の用に供されている建物およびその敷地。
これらの財産を物納に充てる場合は、他に物納適格財産がないことを税務署に説明し、認められる必要があります。
4. 不動産で物納する際の具体的な手続きと流れ
不動産を物納する際の手続きは非常に複雑であり、専門的な知識と周到な準備が不可欠です。ここでは、物納申請の準備から許可までのプロセスを詳しく解説します。
4.1. 物納申請の準備と必要書類
物納申請は、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)までに、所轄税務署長に対して行います。申請には、以下の書類が必要となります [6]。
* 物納申請書: 所定の様式に必要事項を記入します。
* 金銭納付を困難とする理由書: 延納によっても金銭で納付することが困難である理由を具体的に記載し、その根拠となる資料(預貯金残高証明書、借入状況など)を添付します。
* 物納財産目録: 物納に充てようとする財産の詳細(所在地、地積、構造、種類、数量、評価額など)を記載します。
* 物納財産の権利関係書類: 登記簿謄本、公図、測量図、固定資産評価証明書、賃貸借契約書など、物納財産の権利関係や状況を証明する書類を添付します。
* その他: 財産の種類に応じて、必要となる書類が異なります。例えば、不動産であれば、測量図や境界確認書、建築確認済証、検査済証などが必要となる場合があります。
これらの書類は、非常に多岐にわたり、準備には相当な時間と労力を要します。不備があると申請が却下される可能性もあるため、早期に着手し、税理士などの専門家と連携しながら慎重に進めることが重要です。
4.2. 物納申請から許可までのプロセス
物納申請から許可までのプロセスは、以下のステップで進行します。
1. 物納申請書の提出: 相続税の申告期限までに、必要書類を添付して所轄税務署に提出します。
2. 税務署による審査: 税務署は、提出された書類に基づき、物納の要件を満たしているか、物納財産が適格であるかなどを厳しく審査します。特に、管理処分不適格財産に該当しないか、物納劣後財産である場合は他に物納適格財産がないかなどが重点的に確認されます。
3. 実地調査: 必要に応じて、税務署の担当官が物納財産の実地調査を行うことがあります。不動産の場合、現地確認や測量、境界の確認などが行われます。
4. 補完・訂正の指示: 審査の過程で、書類の不備や追加資料の提出、内容の訂正などが求められることがあります。これらに迅速かつ正確に対応することが、許可を得る上で非常に重要です。
5. 物納許可または却下: 審査の結果、物納の要件を満たしていると判断されれば物納が許可されます。許可された場合、国への財産の引き渡しが行われ、相続税の納税が完了します。一方、要件を満たさないと判断された場合は、申請が却下されます。却下された場合は、改めて金銭での納税方法を検討するか、不服申し立てを行うことになります。
このプロセスは、財産の種類や状況によって異なりますが、一般的には数ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。特に不動産の場合、測量や境界確定に時間がかかることが多く、余裕を持ったスケジュールで進める必要があります。
4.3. 不動産の評価と物納価額の決定
物納に充てる不動産の価額は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となったその財産の価額となります [5]。これは、相続税評価額とも呼ばれ、路線価方式や倍率方式などによって算定されます。しかし、物納申請時の時価が相続税評価額と著しく乖離している場合や、個別の状況に応じて調整されることがあります。
例えば、相続税評価額が1億円の土地を物納する場合、原則として1億円分の相続税を納付したとみなされます。しかし、その土地が市場でほとんど価値がないと判断されるような特殊な状況であれば、税務署の判断により物納価額が調整される可能性もゼロではありません。正確な評価のためには、不動産鑑定士による鑑定評価を取得し、税務署との交渉に臨むことも有効な手段となります。
5. 物納のメリット・デメリットと注意点
物納制度は、納税者にとって非常に有効な手段となり得る一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。これらを十分に理解した上で、物納を選択するかどうかを判断することが重要です。
5.1. メリット:納税資金確保、譲渡所得税の非課税など
物納制度を利用する主なメリットは以下の通りです。
* 納税資金の確保: 最も大きなメリットは、手元に現金がなくても相続税を納めることができる点です。これにより、大切な相続財産を急いで売却する必要がなくなり、市場価格に左右されずに納税が可能です。
* 譲渡所得税の非課税: 物納は、不動産などの財産を国に「譲渡」する行為とはみなされません。そのため、通常の売却で発生する譲渡所得税が課税されないという大きなメリットがあります。例えば、含み益のある不動産を売却して納税する場合、売却益に対して所得税・住民税が課税されますが、物納であればこの税金が不要となり、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
* 相続財産の維持: 換金のために急いで不動産を売却する必要がないため、先祖代々受け継がれてきた土地や、事業に不可欠な不動産などを手元に残すことができる場合があります。
5.2. デメリット:手間と時間、却下リスク、評価額の乖離
一方で、物納制度には以下のようなデメリットも存在します。
* 手間と時間: 前述の通り、物納申請には非常に多くの書類準備と厳格な審査が必要であり、多大な時間と労力がかかります。特に不動産の場合、測量や境界確定、権利関係の整理などに時間を要することが一般的です。
* 却下リスク: 物納不適格財産に該当する場合や、書類の不備、延納によっても金銭納付が困難であると認められない場合など、申請が却下されるリスクがあります。却下された場合、改めて金銭での納税方法を検討しなければならず、納税期限が迫っている場合は大きな負担となります。
* 評価額の乖離: 物納に充てる財産の価額は、原則として相続税評価額が基準となります。しかし、この評価額が実際の市場価格と乖離している場合があり、納税者にとって不利になるケースも考えられます。例えば、市場では高値で取引される不動産であっても、相続税評価額が低ければ、その低い評価額で物納することになるため、実質的に損をしてしまう可能性があります。
* 利子税の負担: 物納が許可されるまでの期間、利子税が発生する場合があります。これは、物納申請から許可までの期間が長引くほど、負担が大きくなる可能性があります。
5.3. 物納申請前に検討すべきこと
物納は、相続税の納税が困難な場合の最終手段として位置づけられています。そのため、物納を検討する前に、以下の点を十分に検討することが重要です。
1. 延納の可能性: まずは延納によって相続税を納付できないか検討しましょう。延納の方が手続きが簡便であり、財産を手元に残せる可能性が高いです。
2. 不動産の売却可能性: 物納に充てようとしている不動産が、市場で適正な価格で売却できる可能性がないか検討しましょう。売却によって納税資金を確保できるのであれば、物納の複雑な手続きを避けることができます。
3. 専門家への相談: 相続税に詳しい税理士や不動産鑑定士などの専門家に相談し、物納財産の適格性、評価額、手続きの進め方、そして物納以外の納税方法との比較などについて、具体的なアドバイスを受けることを強く推奨します。特に、物納不適格財産に該当しないかどうかの判断は専門的な知識を要します。
6. 物納の具体的な計算例と節税効果
ここでは、不動産を物納した場合の具体的な計算例を通じて、その節税効果を検証します。
6.1. 不動産を物納した場合の納税額シミュレーション
事例: 相続税額が5,000万円発生し、手元現金が1,000万円しかない富裕層のケースを想定します。物納可能な不動産(相続税評価額4,000万円、時価6,000万円、取得費不明)を保有しているとします。
1. 現金納付: まず、手元にある現金1,000万円を相続税として納付します。
2. 物納: 残りの相続税額4,000万円を、相続税評価額4,000万円の不動産で物納します。
この場合、現金不足分を不動産で補うことで、相続税5,000万円を全額納付することができます。ここで注目すべきは、譲渡所得税の非課税効果です。
もし、この不動産を売却して納税しようとした場合、時価6,000万円で売却できたとしても、取得費が不明なため、売却益の計算が複雑になります。仮に売却益が4,000万円発生したとすると、長期譲渡所得の場合、所得税・住民税合わせて約20%(復興特別所得税含む)の税金、つまり約800万円(4,000万円 × 20%)の譲渡所得税が別途発生する可能性があります。しかし、物納であればこの譲渡所得税は一切かかりません。この事例では、約800万円の税負担を軽減できることになります。
6.2. 物納と現金納付・延納の比較
相続税の納税方法には、現金納付、延納、物納の3つの選択肢があります。それぞれの特徴と、どのようなケースに適しているかを比較した表を以下に示します。
| 納税方法 | メリット | デメリット | 適しているケース |
| :--- | :--- | :--- | :--- |
| 現金納付 | 手続きが最も簡便。利子税がかからない。納税資金の準備が容易。 | 多額の現金が必要。相続財産を換金する必要がある場合も。 | 納税資金が十分にあり、かつ、すぐに準備できる場合。 |
| 延納 | 一括納付の負担を軽減。担保提供により金銭での分割納付が可能。財産を手元に残せる。 | 利子税がかかる。担保が必要。審査がある。 | 納税資金は不足しているが、将来的に確保できる見込みがある場合。相続財産を売却したくない場合。 |
| 物納 | 現金がなくても納税可能。譲渡所得税が非課税。相続財産を維持できる可能性。 | 手続きが複雑で時間がかかる。却下リスクがある。物納不適格財産は不可。評価額が市場価格と乖離する可能性。 | 納税資金が著しく不足し、延納も困難な場合。物納適格財産を保有しており、かつ、売却が困難または不利な場合。 |
この比較表からもわかるように、物納は特定の状況下で非常に有効な手段となりますが、その複雑性から、他の納税方法と比較検討し、慎重に判断する必要があります。
7. よくある質問(FAQ)
Q1: 物納申請が却下される主な理由は何ですか?
A1: 物納申請が却下される主な理由は、物納財産が「管理処分不適格財産」に該当する場合です。例えば、担保権が設定されている不動産、権利の帰属に争いがある不動産、境界が不明確な土地などがこれに当たります。また、必要書類の不備や、延納によっても金銭納付が困難であると認められない場合も却下されることがあります。申請前に、物納財産が適格要件を満たしているかを専門家と確認することが重要です。
Q2: 物納に充てる不動産に担保が設定されている場合はどうなりますか?
A2: 担保権(抵当権など)が設定されている不動産は、原則として管理処分不適格財産とされ、物納に充てることはできません。これは、国が財産を処分する際に、担保権者の権利が優先されるため、管理処分が困難になるためです。物納を希望する場合は、事前に担保権を抹消する必要があります。担保権の抹消には、債務の弁済が必要となるため、資金計画を立てておくことが不可欠です。
Q3: 物納申請から許可までどのくらいの期間がかかりますか?
A3: 物納申請から許可までの期間は、物納財産の種類や状況、提出書類の完備状況、税務署の審査状況によって大きく異なります。一般的には、数ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。特に不動産の場合、現地調査や測量、権利関係の確認などに時間を要することが多く、複雑な案件ではさらに長期間を要する場合があります。納税期限に間に合わせるためには、余裕を持った準備と、税理士などの専門家との密な連携が不可欠です。
Q4: 物納と延納はどちらを優先すべきですか?
A4: 相続税の納税が困難な場合、まずは延納を検討するのが一般的です。延納は金銭での分割納付であり、利子税はかかるものの、物納に比べて手続きが簡便であり、相続財産を手元に残すことができます。また、延納は物納の前提条件でもあります。延納によっても金銭納付が困難な場合に、最終手段として物納を検討することになります。ご自身の状況や相続財産の種類、納税資金の状況などを総合的に判断し、最適な方法を選択することが重要です。
Q5: 物納した不動産の評価額はどのように決定されますか?
A5: 物納に充てる不動産の価額は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となった価額、すなわち相続税評価額が適用されます。これは、路線価方式や倍率方式など、国税庁が定める評価方法に基づいて算定された価額です。ただし、物納申請時の時価が相続税評価額と著しく乖離している場合や、特殊な事情がある場合には、税務署の判断により物納価額が調整される可能性もあります。正確な評価のためには、不動産鑑定士による鑑定評価を取得し、税務署との交渉に臨むことも有効な手段となります。
8. まとめ
相続税の物納制度は、現金がなくても相続税を納めることができる、富裕層にとって非常に重要な選択肢の一つです。特に、不動産などの換金しにくい資産を多く相続した場合に、その真価を発揮します。しかし、その適用には「延納によっても金銭納付が困難であること」という厳格な要件や、物納できる財産とできない財産(管理処分不適格財産)の明確な区別、そして複雑な申請手続きが伴います。2024年から2025年にかけての税制改正により、物納許可限度額の計算方法が見直され、より実態に即した運用が期待されますが、依然として専門的な知識と周到な準備が不可欠です。
物納を検討する際は、まずは延納の可能性を探り、その上で物納のメリット(納税資金確保、譲渡所得税の非課税など)とデメリット(手間と時間、却下リスク、評価額の乖離など)を十分に比較検討することが重要です。そして何よりも、相続税に詳しい税理士や不動産鑑定士などの専門家と早期に連携し、ご自身の状況に合わせた最適な納税方法を選択することが、円滑な相続税納税への鍵となります。適切な準備と専門家のアドバイスを得ることで、現金不足の状況でも安心して相続税を納めることが可能となるでしょう。
参考文献
[1] 国税庁. No.4214 相続税の物納. [https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4214.htm](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4214.htm)
[2] VS-GROUP. 相続税の物納とは!物納できない財産はある?適用要件や延納との違いを解説. [https://vs-group.jp/sozokuzei/payment_in_kind/](https://vs-group.jp/sozokuzei/payment_in_kind/) (2025年8月22日更新)
[3] 国税庁. 令和7年度税制改正等に対応した延納と物納の手引を公表. [https://shirube.zaikyo.or.jp/article/2025/10/13/10334251.html](https://shirube.zaikyo.or.jp/article/2025/10/13/10334251.html)
[4] 国税庁. 物納許可限度額等の計算方法が変わりました. [https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0025006-033.pdf](https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0025006-033.pdf) (令和7年6月)
[5] チェスター. [相続税]物納が認められない財産. [https://chester-tax.com/contents/payment/payment2-2.html](https://chester-tax.com/contents/payment/payment2-2.html)
[6] 三井不動産. 相続税の物納とは?条件や流れを解説. [https://lets.mitsuifudosan.co.jp/column/chishiki/chishiki05](https://lets.mitsuifudosan.co.jp/column/chishiki/chishiki05) (2025年12月22日更新)