相続税対策
2026年3月21日5分で読める0

【2024年税制改正で何が変わった?】暦年贈与と相続時精算課税の賢い使い分け——7年加算ルール対応の最適戦略を税理士が徹底解説

山田 恵子

相続専門税理士・CFP

【2024年税制改正で何が変わった?】暦年贈与と相続時精算課税の賢い使い分け——7年加算ルール対応の最適戦略を税理士が徹底解説

2024年(令和6年)1月1日から、贈与税・相続税に関する大きな税制改正が施行されました。相続時精算課税制度への基礎控除の新設と、暦年贈与の相続財産への加算期間の延長(3年→7年)が主な変更点です。この改正を踏まえた最適な贈与戦略を解説します。

2024年税制改正の主なポイント

1. 相続時精算課税への基礎控除(年110万円)の新設

改正前の相続時精算課税制度では、贈与財産の累計2,500万円まで贈与税が非課税(2,500万円超は一律20%課税)でしたが、贈与財産は全額相続財産に加算されるため、実質的な節税効果は限定的でした。

改正後:相続時精算課税を選択した場合でも、年間110万円の基礎控除が適用されます。この基礎控除内の贈与は、相続財産への加算対象外となります。

節税効果の例:年間110万円の贈与を10年間継続した場合、合計1,100万円が相続財産から除外されます。相続税率40%(課税遺産総額2億円超の場合)で計算すると、440万円の相続税節税効果が生まれます。

2. 暦年贈与の相続財産加算期間の延長(3年→7年)

改正前は、相続開始前3年以内の贈与財産が相続財産に加算されていましたが、改正後は7年以内に延長されました。

ただし、延長された4年分(相続開始前4〜7年以内の贈与)については、合計100万円まで加算対象外となる緩和措置があります。

経過措置:この改正は2024年1月1日以降の贈与から適用されます。2023年12月31日以前の贈与については、旧制度(3年加算)が適用されます。

暦年贈与と相続時精算課税の比較

| 項目 | 暦年贈与 | 相続時精算課税(改正後) |

|------|---------|----------------------|

| 年間基礎控除 | 110万円 | 110万円(新設) |

| 非課税累計額 | 制限なし(毎年110万円) | 2,500万円(基礎控除超過分) |

| 相続財産への加算 | 7年以内の贈与(改正後) | 基礎控除超過分のみ |

| 選択の取消し | 不要(毎年判断) | 一度選択すると取消し不可 |

| 贈与財産の評価 | 贈与時の時価 | 贈与時の時価(相続時に再評価なし) |

最適戦略の選択フレームワーク

ケース1:相続まで10年以上ある場合

暦年贈与を継続することが有利です。年間110万円の基礎控除を活用し、毎年贈与を継続することで、長期的に大きな相続財産の圧縮効果が得られます。

10年間の暦年贈与の効果

  • 贈与総額:110万円 × 10年 = 1,100万円
  • 相続財産から除外される金額:1,100万円(7年加算ルールにより、最後の7年分は加算対象)
  • 実質的な相続財産圧縮額:110万円 × 3年分 = 330万円(7年加算後の純減少額)

ケース2:値上がりが期待される資産を贈与する場合

相続時精算課税が有利です。贈与時の時価で評価が固定されるため、将来値上がりした分の相続税を回避できます。

:現在1,000万円の非上場株式が、10年後に5,000万円に値上がりした場合

  • 相続時精算課税で贈与:相続財産への加算は贈与時の1,000万円(基礎控除超過分)
  • 暦年贈与せずに相続:相続財産は5,000万円

この差額4,000万円分の相続税(税率45%で計算すると約1,800万円)が節税できます。

ケース3:相続まで7年以内の場合

暦年贈与の7年加算ルールにより、贈与した財産の多くが相続財産に加算されます。この場合、相続時精算課税の基礎控除(年110万円)を活用する方が有利な場合があります。

贈与戦略の実践的なポイント

贈与契約書の作成

贈与の事実を明確にするため、毎年贈与契約書を作成することが重要です。口頭での贈与は、税務調査で「名義預金」と認定されるリスクがあります。

贈与税申告書の提出

年間110万円の基礎控除を超える贈与がある場合は、翌年3月15日までに贈与税申告書を提出する必要があります。基礎控除内の贈与でも、申告書を提出することで贈与の事実を明確にできます。

受贈者の口座への振込

贈与した金銭は、受贈者名義の口座に振り込むことが重要です。贈与者が管理する口座に入金しただけでは、実質的な贈与とは認められません。

教育資金・結婚子育て資金の一括贈与

教育資金の一括贈与(1,500万円非課税)

祖父母・父母から子・孫への教育資金の一括贈与は、受贈者1人あたり1,500万円(学校等以外への支出は500万円)まで贈与税が非課税となります(2026年3月31日まで)。

結婚・子育て資金の一括贈与(1,000万円非課税)

祖父母・父母から18歳以上50歳未満の子・孫への結婚・子育て資金の一括贈与は、受贈者1人あたり1,000万円(結婚関連費用は300万円)まで贈与税が非課税となります(2025年3月31日まで)。

FAQ

Q. 相続時精算課税を選択した後、暦年贈与に戻ることはできますか?

いいえ、相続時精算課税を一度選択すると、同一の贈与者からの贈与については暦年贈与に戻ることはできません。選択は慎重に行う必要があります。

Q. 相続時精算課税の基礎控除(110万円)は複数の贈与者から受けられますか?

はい、贈与者ごとに年間110万円の基礎控除が適用されます。父・母それぞれから相続時精算課税を選択した場合、合計220万円の基礎控除が適用されます。

まとめ

2024年税制改正により、相続時精算課税制度が大幅に使いやすくなりました。一方、暦年贈与の7年加算ルールの延長により、短期的な贈与の節税効果は低下しています。最適な贈与戦略は、相続までの期間・贈与する資産の種類・将来の値上がり期待・相続税の税率など、個別の状況によって異なります。相続専門の税理士に相談し、長期的な視点で贈与計画を立てることをお勧めします。

#暦年贈与#相続時精算課税#贈与税#相続税#税制改正#2024年#節税
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